希少金属のプラチナ|埋蔵量と採掘される産出国

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金・プラチナ

現物資産やジュエリー素材としても人気の、希少かつ高価な貴金属プラチナ。

ですが、金などと比べると人類の歴史における関わりは短く、どのような金属であるかは意外と知られていません。

そこで今回は、プラチナの埋蔵量や産出国、その希少性や将来の展望などを解説します。

地球に眠るプラチナの埋蔵量とこれまでの採掘量

これまですでに産出された分も含め、地球上に存在するプラチナの総量は、ずばり1万6千トンと推計されています。

金の地球上の総量が20数万トンと見積もられているのと比べると、いかに希少性の高いレアメタルであるかがわかるでしょう。

有史以来、人類が手にした量についても、プラチナは金にはるかに及びません。金の総採掘量が約15~17万トンと推定されているのに対し、プラチナは約5,000~7,000トン程度といわれています。これは、50mプールに例えると金が3杯半ほどになるのに対し、プラチナは1杯目の足首が浸かる程度です。金も十分に希少ですが、プラチナがいっそうレアで限られた貴金属であることがわかるでしょう。

年間の生産量を見ても、金が約2500トンであるのに対し、プラチナは世界全体で200トンにも届きません。金の10分の1以下のペースでしか生産できないと考えると、その希少性がよりはっきりとうかがえます。これは、プラチナが1トンの原鉱石から約3gしか採取できず、生産に大きな時間とコストを要するという事情にも起因しています。

プラチナ産出国ランキング

世界のプラチナ産出量を国別に5位までランキングすると、2018年のデータで次のようになります。

順位

国名

産出量

1位

南アフリカ共和国

約137トン

2位

ロシア

約22トン

3位

ジンバブエ

約15トン

4位

カナダ

約7トン

5位

アメリカ

約4トン

ランキングだけ見ると、世界の比較的広範囲に産地が分散しているように感じるかもしれませんが、産出量ベースで比べると、1位の南アフリカ1国で世界全体の4分の3を占めているという大きな偏りがあります。

2位のロシアを含めると、世界の産出量の90%以上、3位のジンバブエまで入れれば実に95%を上位3国で独占していることになります。

ちなみに、日本は「産出国」ではありませんが、プラチナの生産国として重要なポジションにある国です。プラチナは貴重かつ有用なレアメタルであることから、リサイクルも主要な生産手段の1つであり、日本はその技術において世界のトップクラスにあるのです。

南アフリカのプラチナ採掘

プラチナはもともと地球上に存在した金属ではなく、隕石によってもたらされたとする説が有力です。そのため、金以上に採掘できるエリアが限られていると考えられています。

世界一のプラチナ産出国である南アフリカには、ブッシュフェルト複合岩体と呼ばれる約12万平方キロメートルの岩盤地帯に、プラチナを始めとしたレアメタルを含む地層が広がっています。世界のプラチナ需要のほとんどが、この南アフリカの鉱脈に依存しているのです。

ブッシュフェルトの鉱脈は100km以上の幅があるといわれ、現在の産出ペースで採掘を続けても、掘り尽くしてしまうまでにはかなりの時間を要するでしょう。レアメタル採掘は南アフリカにおける主要産業の1つであり、多くの人々の生活を下支えしています。鉱山地帯の周囲には多数の精錬工場があり、工場や鉱山で働く労働者は、同国では比較的恵まれた環境にあるとされています。

他方で、希少かつ価値の高い金属の産出が1国ないし2~3国の寡占状態にあるということは、ときに供給の不安定化を招く可能性も否めません。実際、過去には南アフリカの通貨ランドの下落にともない、プラチナ市場の価格も下がって供給減に陥ったこともありました。

南アフリカ1国の経済状況が、世界全体の流通量や価格変動に直接影響するという点は、プラチナと金の大きな違いの1つです。

小惑星からプラチナ採掘!?

プラチナは、前述のとおり隕石によって地球外からもたらされたと考えられています。そこで、宇宙に存在する小惑星からプラチナを採掘して持ち帰るという、夢のような計画が提唱されています。

きっかけは、2010年に探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」の表面岩石の採取に成功したことでした。地球上では広範囲に分散し、密度が小さくなっているレアメタルも、隕石内では高密度で存在していると考えられていることから、いわゆる「スペースマイニング」が産業として成り立つ可能性が出てきたのです。

ただし、現状では十分な量のプラチナを地球に移送する手段がなく、とても採算に見合う話ではありません。それでも、将来的に低コストかつ大容量の宇宙船が開発されれば、スペースマイニングもまったくの絵空事とはいえないでしょう。もしかしたら、プラチナをはじめレアメタルが宇宙から供給される日が、そう遠くない未来に訪れるかもしれません。

技術発展に欠かせない!プラチナの希少価値

プラチナといえば、一般には結婚指輪などのジュエリー素材としての用途が思い浮かぶのではないでしょうか。ですが、宝飾品としての需要は全体の3割程度しかなく、6割以上が実は工業の分野で使われています。中でも自動車の排ガス浄化装置の触媒としての利用が多く、全体の4割ほどを占めています。この点もまた、プラチナが同じ貴金属である金と大きく異なっている特徴の1つです。

自動車産業に限らず、IT・化学・医療・バイオなど、今日プラチナはさまざまな工業技術の分野で欠かせないレアメタルとなっています。

現物資産やジュエリーとしてみると、市場価格が景気に左右されるという特殊性をもった貴金属といえるでしょう。

近年では、世界的な政治・軍事情勢不安や新型コロナウイルスの流行などを受けて、金とプラチナの市場価格の逆転現象が続いています。

ですが、その希少性と技術発展の面での需要が衰えない限り、プラチナの価値が失われることはありえません。

資産・宝飾品・工業用レアメタルと、プラチナはこれからも幅広い分野で、私たちの生活を支え続けてくれるでしょう。

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