ゴールドのジュエリーに使われる「金」は、一般的に金をベースにした「金合金」で、さまざまな純度のものがあります。
金合金で作られた高級ジュエリーと、金メッキの安価なジュエリーは、見た目だけではなかなか区別がつきません。
そんなときには、金の比重または密度を調べると真贋を確かめることができます。その数値をもとに金属の種類を判別することも可能です。
金は金属の中でも特に比重・密度が大きいため、計測は本物の金かどうか調べる手段として有効です。金の比重・密度を手軽にはかる方法を複数ご紹介します。
目次
金の比重・密度とは
比重とは、「ある物質の質量と、それと同体積の基準物質の質量との比」です。基準物質として、1気圧、摂氏4度の純粋な水が使われます。簡単にいえば、「同じ体積の水と比べてどのくらいの質量があるか」ということです。比重に単位はなく数値のみで表します。
密度とは、「物質の体積あたりの質量」です。金属の密度は、「g/ cm³(グラム毎立方センチメートル)」といった単位で表します。グラム毎立方センチメートルとは、「1立方センチメートル(1辺が1センチの立方体)の大きさにしたときに何グラムか」という意味です。
比重と密度については、意味合いや単位は異なるものの示す数字は同じなため、今回は同列に紹介していきます。
金の比重(密度)一覧
純金の比重(密度)は19.13~19.51で、金属の中でもかなり比重が大きいことで知られています。一方で割り金(ベースとなる金属に混ぜる金属)に使われる銀や銅、パラジウムは金よりも比重が小さいため、割り金の割合が高いほど比重は小さくなっていきます。
つまり金合金は、比重(密度)をチェックすることで純度が分かるのです。また金属の種類によっても異なるため、純金かそうでないかという金の真贋も見分けることができます。
それぞれの純度別の比重値(密度)はこちらを参考にしてください。
金の品位 |
比重(密度:g/cm3) |
24金(K24) |
19.13〜19.51 |
22金(K22) |
17.45〜18.24 |
20金(K20) |
16.03〜17.11 |
18金(K18) |
14.84〜16.12 |
14金(K14) |
12.91〜14.44 |
10金(K10) |
11.42~13.09 |
金の比重に関する逸話
金の比重にまつわる逸話として有名なのが「アルキメデスと金の王冠」でしょう。
アルキメデスとは紀元前3世紀に存在した科学者です。
アルキメデスの故郷であるシチリア島シラクサのヒエロン王はあるとき、金細工職人に金塊を渡して王冠を作るよう命じました。王冠は無事完成しましたが、その後金細工職人に関するよからぬ噂話が流れます。それは、「金細工職人は金に混ぜものをして王冠を作り、金塊の一部をくすねた」というものでした。
そこでヒエロン王はアルキメデスを呼び、王冠を壊すことなく混ぜものがあるかどうかを調べるように命じます。もしも王冠に金より密度の小さい銀などが混ざっていれば、同じ重さの純金と比べて王冠の体積は大きくなります。しかし、複雑な形をしている王冠の体積をはかるのは容易ではありません。悩み続けたアルキメデスですが、ある日風呂に入って浴槽につかったとき、水面が上昇し水があふれるのを見て王冠を壊すことなく体積を知る方法を思いつきます。
このときアルキメデスは、服を着るのも忘れて「エウレカ!」(わかった!)と叫びながら裸で街中を走り回ったといわれています。
この「アルキメデスの原理」は、「流体の中で静止している物体は、その物体が押しのけた流体に流体の重さだけ軽くなる」という浮力に関する法則です。この法則を使えば、自宅でもおおよその金の比重をはかることができます。
金の比重(密度)の計算方法
ここからは手軽にできる金の比重(密度)の計算方法についてです。
比重を調べるには「比重計」という専用の機械を用います。弊社では、非破壊かつ誤差を抑えて計測できる電子比重計を導入しています。ただ、簡易的な検査なら実は家庭でも実施可能です。自宅にあるものだけでできるやり方をご紹介します。
今回は先日弊社で買取した、「喜平ブレスレット」の比重(密度)を調べていきます。
まずは刻印を確認しよう
金の比重(密度)を調べる時、まずは金製品に記載された「刻印」を確認します。
金製品をお持ちの方は「K24」や「K18」などの表記を目にしたことがある方もいると思います。これらが、金の純度を示す「刻印」になります。
それぞれの刻印が表す金の純度について、下の表にまとめました。
刻印 |
純度 |
K24 |
99.99% |
K22 |
91.7% |
K18 |
75% |
K14 |
58.5% |
K10 |
41.7% |
メッキ製品の場合は下のような刻印になります。
刻印 |
意味 |
K18GP(K18 Gold Plate) |
金メッキ、電気分解により金をミクロン単位で真鍮などに付着させる加工 |
K18GF(K18 Gold Field) |
金張り、金メッキより厚い金の層の中心に真鍮が入っている |
刻印は金製品の品位を調べるのに便利ですが、中には刻印がなかったり、また刻印の表記を偽った製品もありますので、注意が必要です。
比重値(密度)値を求める計算式
比重値(密度)を求める計算式は次の通りです。
比重値(密度)=質量÷体積
質量と重量は厳密に一致するため、知りたい物体の「重さ」と「体積」を計測しましょう。
step.1 用意するもの
家庭で行うために必要なものは次の6つです。
・重量計(なるべく小数点以下まで求められるもの)
・プラスチック容器(中身が見える透明なタイプがやりやすい)
・クリップ数個(針金を曲げたシンプルなタイプのもの)
・電卓 ・ペンなどの筆記用具
・メモ用紙
電子比重計は写真の通り、上記6つの機能が全て備わっています。
step.2 【重量】金製品の重さを計る
必要なものを揃えたら、比重(密度)を調べたい物体の重さを重量計で測定しましょう。
この「喜平ブレスレット」の重さは「50.25g」です
step.3 容器に水をいれ重量計にのせる
次に、プラスチック容器に水を注ぎましょう。余裕を持って金製品を入れられる程度の量で十分です。水の入った容器を重量計にのせたら、その状態でゼロにリセットします。
電子比重計も、ご覧のように中の容器に水が張られた状態です。
step.4 【体積】金製品を吊るして水の中に入れる
次はいよいよ体積を測ります。家庭では、釣り針のように広げたクリップに引っかけて吊るすといいでしょう。このときに重要なのは、物体をすっぽりと水に沈めることと、吊るすのに使うクリップの部分はなるべく水中に入れないことです。
また、吊るしたものが容器の側面や底面に触れないようにします。水面ぎりぎりの位置に沈めるイメージです。透明なプラスチック容器がおすすめなのは、このときに横から確認できるからです。
はかりに数値が表示されたらメモに控えておきます。
ここで計測した重量(g)はそのまま体積(㎤)に当てはめることができます。
電子比重計の場合は、空中重量50.25gから水中重量46.91gを引いたものが体積になります。
つまりこの「喜平ブレスレット」の体積は「3.34㎤」です。
step.5 重量を体積で割って比重値(密度)を求める
計測した数値を計算式に当てはめます。
比重値(密度)=重量50.25÷体積3.34=15.04
すでにご紹介した一覧と照らし合わせるとK18の範囲内に収まっているため、この「喜平ブレスレット」に使われているのはK18(18金)だと分かりました。
比重検査の注意点
比重検査はかなり有効な手法ではありますが、万能というわけではありません。
たとえば中ががらんどうの空洞になっている形状のものや宝石などがあしらわれているものは、体積を正しく測ることができないため、正確な比重を導き出すのはほぼ不可能です。また、金に近い比重を持つタングステンを使っている場合も、区別をつけられません。
比重検査の以外の検査方法
金の純度や真贋を知りたいときに使える、上記以外の方法を紹介します。
刻印をチェックする
冒頭でお話したようにジュエリーやインゴットの多くには、「K24」「K18」などの品位をあらわす刻印があります。正規に流通しているものなら、ほとんどの場合この刻印で判別可能です。
ただし、中には刻印がないものや、刻印の純度を偽った商品、メッキ製品でありながらメッキの表記がないニセモノが存在します。ネットオークションやフリマアプリなど、正規ルートではない取引で入手した中古品などには十分注意しましょう。
磁石を近づける
金は磁石に反応しません。
もし磁石に吸いつく場合、鉄などにメッキされたイミテーションである可能性が高いでしょう。ただ、他にも銀など磁石に反応しない金属はありますので、磁石にくっつかないからといって金と断定するのは危険です。あくまでも判断基準のひとつとしてお考え下さい。
純度が明らかな金製品と値段などを比較する
すでに純度が分かっているものと価格や重み、色味を比較するやり方です。
正規のオンラインショップなどで売られている金製品の価格と比べて、純度は同じなのに価格があまりに安い場合は慎重に検討した方が良いでしょう。
また純度の高い金は小さいものでもずっしりとした重みがあり、濃い山吹色をしています。純度が低くなるにつれ軽くなり、色味も薄れて黄色っぽくなっていくため、比較することである程度は目安をつけられます。
まとめ
金の真贋や純度を知るための比重(密度)検査とはどんなものなのかをご紹介しました。
弊社ではご紹介した通り電子比重計を使用し、誤差の少ない検査を行っております。製品の中に空洞があるなど、品物によっては一旦お預かりの上、専門の業者にて検査を行う場合もございます。
純度が不明な金製品でも弊社でしっかりと査定させて頂きますので、ぜひお気軽にご相談くださいませ。