結婚指輪やエンゲージリングとして人気のプラチナ。
希少な金属であることはよく知られていますが、貴金属としての価値はどれほどのものなのでしょうか?
今回はプラチナの価値について金との比較や過去1年間・10年間の価格推移、そして今後の予想についてお話します。
目次
プラチナの価値|希少性について
プラチナも金と同様に地球上にごく限られた量しか存在しないレアメタルですが、希少性について言えば、金よりもプラチナの方が上です。
プラチナと金の採掘量について下の表にまとめましたのでご覧ください。
|
総量(埋蔵量含む) |
年間採掘量 |
埋蔵量 |
プラチナ |
1.6万トン |
200トン |
1万トン |
金 |
24万トン |
3000トン |
5万トン |
総量・採掘量・埋蔵量いずれの数字を見ても、プラチナがいかに希少性の高い金属かお分かり頂けるかと思います。
また産出地域が限られている点もプラチナの希少性を高める要因のひとつ。
年間産出量のおよそ7割を南アフリカ共和国が占めていて、次点のロシアと合わせると、実に世界シェアの9割近くに及びます。
プラチナと金、価格の逆転はなぜ起こった!?
お伝えした通り、プラチナは金よりも希少価値が高く、取引価格についても「プラチナ>金」であることが当たり前とされてきました。
ところが、上のグラフで示したように、2011年秋に取引価格が「金>プラチナ」となる逆転現象が起こります。
このときは1年ほどで逆転状態が解消されましたが、2015年から再び金の価格がプラチナを上回り、それ以降は現在まで金の取引価格がプラチナを大きく上回っています。
希少性は「プラチナ>金」であるにも関わらず、
価格が「金>プラチナ」というこの逆転現象の理由を知るために、
・プラチナと金|用途の違い
・プラチナと金|市場規模と安定性の違い
上記の2点について考えていきましょう。
プラチナと金|用途の違い
プラチナと金の価値が逆転した理由のひとつめは、それぞれの用途の違いにあります。
金の用途としては、「宝飾品」「投資」「産業」などがありますが、そのうち「宝飾品の材料」としての用途が50%以上を占め、「投資対象」としての用途も25%以上、「産業資源」としての用途は10%程度です。
一方のプラチナは、「宝飾品」としての用途は30%にも満たず、実に60%以上が「産業用」、中でも自動車の排ガス浄化触媒として多く用いられ、その割合は全体の40%ほどにもおよびます。
つまり需要の多くを産業に依存しているプラチナは、市場経済の影響をより受けやすいのです。
先ほどの価格推移グラフにて、2015年から2016年にかけてプラチナの価格が大きく下落していますが、これはフォルクスワーゲン社の排ガス不正問題により、プラチナ需要の多くを占めていたディーゼル車が激減したことが大きな原因のひとつ。
さらには、プラチナに代わって「パラジウム」の触媒利用が増加したことも、プラチナ価格の下落に拍車をかけました。
プラチナと金|市場規模と安定性の違い
プラチナと金の価値が逆転した理由のふたつめは、資産としての安定性の違いがあります。
金は、「有事の金」とも呼ばれるように、世界中でその価値が認められており、流通量が多く市場も大きい為、相場が乱れることがほとんどなく、「安定資産」として確固たる地位を築いています。
一方のプラチナは、冒頭でお伝えしたように、流通量が金と比べて1/10以下しかありません。市場規模がとても小さいわけです。
さらには年間産出量のおよそ7割を南アフリカが占めているため、同国の社会情勢にも大きく左右されます。
これらのことから、プラチナは資産として不安定で乱高下しやすいデメリットがあるわけです。資産商品としては「ハイリスク・ハイリターン」と言えるでしょう。
金のような実物資産は「リスクヘッジ」としての役割を求められますので、この点でプラチナは安定性に欠けており、金融業界において金よりも需要が低くなります。
プラチナの価値は今後どうなる?
ここまでお話してきたプラチナの価値についてまとめると以下のようになります。
・鉱物としての希少性は金よりも高い
・年間採掘量の9割を南アフリカとロシアで占める
・需要の4割以上が自動車の触媒としての用途
・金よりも市場が小さく価値が乱高下しやすい
これらも踏まえて、プラチナの価値の今後についてお話していきます。
プラチナ値上がりの兆し
こちらは過去1年の金とプラチナ価格の推移です。
2020年に新型コロナウイルスによる世界経済の停滞を受け、リスクヘッジのための資産として金が高騰しましたが、2021年現在では相場が頭打ちになった感があります。
対してプラチナは2021年に入ってから大きく値を上げ、2021年5月現在の買取価格は1gあたり4,600円を超えています。
これは、相場のけん引役である金に1年遅れで追従してきたということがひとつ。
そして、再生可能エネルギーとして注目される水素エネルギーの触媒として、プラチナを始めとする白金族金属の需要が高まってきたことが挙げられます。
パラジウムの高騰に追従するか?
こちらは過去10年のプラチナとパラジウムの価格推移グラフです。
パラジウムは2010年頃から触媒として使用されていました。当時のパラジウムはプラチナよりもずっと安価だったため、プラチナの代替として需要が高まっていったのです。
ところが2016年を過ぎた頃から価格が高騰し、現在ではプラチナはおろか金をも凌ぐ価格となっております。
そのため、今度はパラジウムからプラチナへの切り替えの動きが、自動車産業に見られはじめています。再代替が進めば、こちらもプラチナの価格を押し上げる要因となるでしょう。
パラジウムについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:希少金属のパラジウムとは?用途や特徴など
プラチナ価格が再び金を上回る可能性は?
金融資産として考えた場合は、市場規模も大きく安定した金に、プラチナは及ぶべくもありません。
しかし、産業資源として考えた場合、将来的にプラチナの価値が金を上回る可能性は十分ございます。
昨今では再生可能エネルギーへの世界的な注目が高まっており、電気自動車(EV)と並んで、水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)の普及も進んでいます。その触媒としてプラチナやパラジウムなどの白金族金属の需要はますます高まっていくでしょう。
さらに、南アフリカとロシアの2国による産出寡占状態を考えた場合も、プラチナ価格が上昇する可能性があります。
かつてのリーマンショックの直前に、南アフリカが財政難からプラチナの輸出が困難となった際、プラチナ価格が高騰した事例があります。これと同様のことがコロナ禍の現在で起きれば、一時的にしろプラチナ価格の高騰が起こるでしょう。
まとめ
今回はプラチナの価値や今後についてお話してきました。
お伝えした通り、プラチナは金よりも高い希少性を誇ります。そのため今後産業需要が堅調に伸びていけば、価値が大きく上昇する可能性もあります。
時勢により変動するプラチナの価値を正しく掴むために、「自動車産業の動向」そして「南アフリカ・ロシアの情勢」これら2点はしっかりと抑えておくと良いでしょう。