金の採掘方法|金鉱脈の発見から掘り出しまで
「一攫千金」という言葉があるように、金を掘り当てれば莫大な富を手にすることができます。
金が発見された地へ採掘者がこぞって押しかけることは「ゴールドラッシュ」と呼ばれ、かつて多くの人が巨万の富を夢見て金脈を求めました。
今回は金がどうやって発見され、どのように採掘されるのかをご紹介します。
金鉱脈の発見方法とは
金を採掘するためにはまず、金を発見しなければいけません。金鉱脈を探すには2つのポイントがあります。
河川の砂金を辿る
ひとつめは河川の砂金を見つけることです。
砂金とは砂のように細かい金の粒のことで、地表に露出した金鉱脈が雨風で少しずつ削られ、流れ出た金が川底に沈殿したものです。下流で砂金を発見した場合、それは上流に金鉱脈が存在する可能性が高いということになります。
河川で採れる砂金を「川金」といいます。
温泉地を探す
これはもちろん、どの温泉でも良いというわけではありません。
金鉱脈のある温泉地はある条件があることが近年の研究結果でわかっています。その条件とは「塩素を多く含む」ということです。
塩素を含む温泉地には「浅熱水性金銀鉱床」のある可能性が高いといわれています。「浅熱水性金銀鉱床」とはその名の通り浅い場所で生成される金や銀が含まれた鉱床です。
雨水などが地中に浸み込んで地下を循環しながら、マグマや堆積岩からさまざまな金属を取り込みます。それがマグマ由来の熱水と混ざり、圧力の変化や温度の低下によって鉱物(金や銀)が沈殿し、鉱脈となるのです。ですからこの「浅熱水性金銀鉱床」を探す手がかりとして、「塩素を含む温泉地」を見つければいいわけです。
温泉地ということに注目すれば、火山大国である日本にもまだまだ金鉱脈が存在すると考えられています。
河川で採取する「川金」に対して、鉱脈を掘って得られる金を「山金」といいます。
ゴールドラッシュのきっかけ
冒頭でお話したゴールドラッシュは世界でもいくつかの例がありますが中でも、1848年のアメリカ合衆国カリフォルニア州で起きたものが特に有名です。このきっかけとなった金発見のお話。
1848年1月カリフォルニアの農場で使用人をしていたジェームズ・ウィルソン・マーシャルが、工場の水を排水するための溝を掘っていたところ、偶然金の粒を見つけます。
当初ジェームズはこのことを秘密にしていました。
ところが新聞記者のサミュエル・ブラナンに知られ、あっという間にアメリカ全土に知れ渡ってしまいました。そして金を求めてアメリカ国内だけでなく世界中から採掘者が殺到しました。
当時はカリフォルニアまでの旅路も非常に困難で、船の難破や伝染病などで、現地到着前に亡くなる方も多数いたそうです。まさに命がけで一攫千金を狙っていたわけです。
金の採掘方法とは
金鉱脈を発見したらいよいよ採掘です。
金の採掘は時代とともにいくつかの方法が採用されてきました。
選鉱鍋を用いた採取
川で選鉱なべを使用しての砂金取りをする男性
もっとも古くから行われてきた採掘(採取)方法です。
古代エジプトでもこの方法で金の採取が行われていました。
上流に金鉱石が存在していた、または偶然に砂金が発見されたなど、見込みのある河川に目星をつけ、砂の溜まりやすい中州や屈曲部で「選鉱鍋(パンニング皿)」などを用いて砂金を選別するやり方です。
金は比重の大きい鉱物ですので、流水で洗い流せば皿の中には重い金だけが残るというわけです。
この採取は手軽で危険も少ない方法ですが、1日がかりで得られる金の量は、熟練者であってもごくわずかなものです。
選鉱台を用いた採掘
前述の選鉱鍋を大掛かりにしたものが、写真のような「選鉱台」を用いた採掘方法です。
金鉱石を含んだ土砂を上部に入れ、水で洗い流し、残った金塊を採取するやり方です。
露店掘り
金採掘の初期は選鉱鍋や選鉱台などを用いて、地表近くの金を採掘していました。これが大規模になったものが「露店掘り」です。
これは坑道を作らず、表面の岩石を掘削し、地表近くにある金鉱石を採掘するやり方です。
この露店掘りは今でも使われる方法ですが、地表近くの金は短期間で掘りつくされてしまうことが一般的です。
水圧掘削法
露店掘りの次に開発されたのが「水圧掘削法」です。
金鉱脈の側面や崖の砂礫層に対して高圧のホースなどで強力な水流を吹きかけ、土砂が崩れたときに金を含む層が底に沈殿して集められるというものです。
正式には「水力採鉱」と呼ばれ、1853年にゴールドラッシュで湧くカリフォルニアにて開発された方法です。カリフォルニアではこの水圧掘削法で、1880年代なかばまでにおよそ340トンもの金が採掘されました。
坑内採鉱法
水圧掘削法の代替法として開発されたのが「坑内採鉱法(こうないさいこうほう)」です。「コヨーティング」とも呼ばれています。
金鉱脈の上から縦穴をほり、その縦穴からさまざまな方向に横穴を掘り進めて採掘するやり方です。
硬岩探鉱法
最終的に最も多く金を採掘できる方法として確立されたのが「硬岩探鉱法(こうがんたんこうほう)」です。
これは石英などの金を含む岩を爆破し、岩石を掘削し、そこから流水を使って金を選別するというやり方です。
アフリカなどの小規模な採掘現場では、流水の代わりにヒ素や水銀を用いた「硬岩探鉱法」が行われています。金を選別するためにヒ素や水銀が適しているためですが、その工程でヒ素や水銀が大気汚染や作業者への健康障害を引き起こすために、問題となっています。
最新の金採掘方法
古代の選鉱鍋を用いた金採取から時を経て、現代ではより安全な「含水爆薬」を用いた採掘方法が採用されています。
まず採掘場に20~50か所の穴を開けます。次にその穴に「含水爆薬(紙の筒に包まれた粘土状の爆薬)」を装填します。点火には電気雷管を使用します。
爆薬の装填が終わったら安全確認し、作業員への通達が完了次第、発破します。
発破直後は粉じんが舞い、有毒なガスが発生する場合もあるため、それが収まるのを待って岩石の回収作業に取り掛かります。場合によっては終業直前に発破を行い、翌朝から回収作業にかかる時もあります。
採掘で得られる金の量とは?
採掘で得られる金鉱石には、金以外にもさまざまな金属が含まれています。金鉱石に含まれる金の量は、一般的に1トンあたり3グラム程度と、ほんのわずか。これは平打ちのリングたった1個分です。
そのため、他の金属を取り出しつつ金を回収する方法も、採掘方法と共に開発されてきました。
この鉱石から金属を精製する技術のことを「冶金(やきん)」と呼びます。
冶金についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:冶金とは?金の作り方を解説します。
これまでの採掘量と残された埋蔵量はどのくらい?
地球上に文明が誕生してからこれまでに採掘された金の量は、およそ19万トン、埋蔵量はおよそ5万トンだといわれています。
日本にあった金山の多くが資源の枯渇により閉山されたように、いずれ世界のどこに行っても金が採れないという日が来るかもしれません。その一方で、採掘技術の進歩などにより、これまで採掘できなかった場所から金を採れるようになる可能性もあります。
世界全体で採掘される金に目を向けると、1年間の産出量は3,000トンあまりで推移し、2019年は3,300トンほどでした。
このうちトップの産出量を誇るのは中国で、およそ420トン。これに330トンのオーストラリアが続きます。ちなみに日本で唯一の金山である菱刈鉱山の金産出量は、年間で6~7トンほどです。
金の埋蔵量や、各国の金産出量はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:金の埋蔵量はあとどれくらい?地球に眠る金の総量と採掘量
金の世界的メジャーな採掘会社
世界には大手金鉱山会社がいくつもあり、金の産出に関して重要な役割を担っています。
2019年に「ゴールドコープ」(カナダ)を買収し世界最大手に躍り出た「ニューモント」(アメリカ)、首位の座を明け渡した「バリック・ゴールド」(カナダ)といった会社が、世界各地で金を採掘しています。ちなみに日本の菱刈鉱山で採掘を行っているのは「住友金属鉱山」です。
日本にも金鉱脈はある?
金は日本国内でも採掘することができます。現在、商業規模で金の採掘を行っているのは鹿児島県北部にある「菱刈鉱山」のみですが、かつては全国に金山があり、金の採掘が行われていました。
中でも有名なのは新潟県の佐渡島にある「佐渡金山」でしょう。1601年に開山されたと伝えられ、平成元年(1989年)まで長きに渡り金を産出してきました。
現在は観光スポットとして整備されており、江戸時代の坑道や明治時代に使われていたトロッコなどを見ることができます。歴史がある金山ゆえに、金の採掘にまつわるあれこれを知るのにうってつけの施設です。
また、大分県日田市にあった鯛生金山の跡地には、坑道を利用した地底博物館が整備されています。
日本の金山の歴史や埋蔵量についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:日本の金山|金鉱山の歴史や埋蔵量
金採掘権(鉱業権)とは
金を始めとする資源は、例え自分の所有地から出てきたとしても勝手に採掘してはいけない決まりになっています。鉱物を採取・取得するには「鉱業権」を取得しなくてはいけません。
これは土地の所有権とは関係のない権利で、他人の土地に対しても鉱業権は取得できます。ただし、実際に採掘を行うには、その土地を所有したり借用したりする必要があります。
金の採掘体験を楽しもう|金を売るならウォッチニアン買取専門店まで
日本では自分で金を掘ることはできませんが、砂金採り体験ができる施設があります。
すでにご紹介した鯛生金山や静岡県伊豆市の土肥金山、秋田県鹿角市にある尾去沢鉱山などでは、原始的な選鉱鍋を用いた砂金採りが楽しめます。
これらの施設では、自分で採った金を持ち帰ることが可能で、思い出作りにもピッタリです。これまでご紹介した金採掘の原点ともいえる砂金採りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
また使わなくなった金や貴金属をお持ちの方はぜひ買取専門店「ウォッチニアン買取専門店」をご利用ください。
金鑑定の経験豊富な熟練の鑑定士が品物の価値を見極め、高価買取いたします。
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