日本にある金鉱山と新たな金鉱脈とは?

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金・プラチナ

西部開拓時代のゴールドラッシュ、大航海時代のエルドラド伝説を持ちだすまでもなく、古今東西「ゴールド=金」のまばゆい輝きは人類を魅了してやみません。

金の採掘事業が栄えた江戸時代から明治期には日本各地にあった「金山」ですが、いま現在も操業しているのは「菱刈鉱山」ただひとつ。

「金」は将来、枯渇していくだけなのでしょうか?未知なる金鉱脈や地底深く眠る「金」が地球上に残っている可能性は?

日本の金鉱山、新たな金鉱脈の可能性について詳しく解説します。

代表的な日本の金鉱山

日本の代表的な金鉱山として誉れ高いのが、次の3つ。

・佐渡金山(新潟県)

・鴻之舞(こうのまい)金山(北海道)

・菱刈金山(鹿児島県)

「金山」といえば、誰もが真っ先に思い浮かべる佐渡金山。発見されたのはなんと「関ヶ原の戦い」の直後という歴史の古さです。今では当時の金採掘の様子を伝える観光名所となっています。

戦時中は金銀より鉄の需要が高まり、日本の金採掘事業は徐々に衰退。1915年に操業を始め「金73トン、銀1,234トン」と国内第3位の産出量を誇った鴻之舞金山も1973年(昭和48年)に閉山。

いま現在、国内で商業生産している鉱山は菱刈鉱山のみとなってしまいました。

金鉱脈の発見方法

「金鉱脈」というのはどのように発見されるのでしょうか?

金が塊で見つかるようなことはまず、ありません。石英(透明度の高いものは水晶と呼ばれる)からなる鉱脈(石英脈)の中に金を含有した部分があることが大半です。

その金を含む石英脈が川の浸食を受けて流され、金の成分が川底などに沈殿したものが「砂金」として発見されます。

河川敷で川底からすくった小石や砂がキラリと光り「金か?…金だ!」と雄叫びを上げ、ガッツポーズ。ドラマでそんなシーンを見たことがありませんか。まさにそれこそが「金鉱脈」の手がかりなのです。

金鉱脈発見の2通りのケース

砂金が流れこんでいる川の上流を探索するのが金鉱脈発見の第1のケース。

第2は、温泉から金山が発見されるケースです。塩素を多く含む温泉が湧く土地には「浅熱水性金銀鉱床」という火山帯のマグマによって生じた金銀鉱脈がある可能性が高いのです。

どちらも「可能性が高い」だけで必ず鉱脈が見つかるわけではありません。

鉱脈のある箇所の特定も困難な上、運良く発見できたとしても、商業的な生産にこぎつけるためには、10年以上の歳月と巨額の資金を投じる必要があります。

実際に金採掘事業がスタートするまでには長い時間を要するのです。

金鉱石から金を取り出す4つの方法

金の付着した鉱石から金を取り出すには次の4つの方法があります。

・青化法

・灰吹法

・アマルガム法

・銅の溶鉱炉

金鉱石を細かく砕き、水に溶かして青化カリや青化ソーダを加えて濾過したものに亜鉛粉末を入れて分離させ、金だけを取り出す方法が青化法です。

旧約聖書にも記述が残るほど古くから行われているのが灰吹法。粉砕した金鉱石に鉛を加えて炭火で溶かし、灰を敷いた皿の上で1000度の高温に熱します。金以外の金属はすべて炭化して灰に付着するので残った金を容易に取り出せる仕組みです。

金鉱石に水銀を混ぜて「アマルガム」という合金を作り、粉砕して熱すると水銀が蒸発して金だけが残ります。これがアマルガム法です。手軽ではありますが、有害な水銀を使う方法のため、現在ではほとんど行われていません。

金鉱石から金を取り出す手段としての現代の主流は、金鉱石と銅鉱石を一緒に溶鉱炉に入れる方法です。比較的低温で溶け出していく銅、銀を取り除いたあとの鉱物を電気分解し、純粋な金を取り出します。

金の主な産出国について

現在、最も多く金を産出するのは広大な国土を持つ中国。2019年の調査によれば、中国で採掘された金は420トンにも及び、その量は日本の60倍以上でした。

かつて1970年代では、全世界の7割を占める産出量を誇った南アフリカが首位でした。しかし、施設の老朽化、長引く政情不安などにより、産出量が激減。2019年現在では12位にまで落ちこんでいます。

2位のオーストラリア、3位のロシアとも産出量は300トン台ですから、中国の首位キーブは当分のあいだは盤石といえそうです。

しかし、先に述べたように、金鉱脈の発見から採掘まで手間も時間も費用もかかることと、純粋な金を取り出す作業もまだ容易にはできないことから、今後、この分野の大きな技術革新でも起これば、思いがけない国がトップ争いに参戦し、金産出国の首位争いはまた違った様相を見せてくれるかもしれません。

海底の金鉱脈が注目されている

実は今、日本国内で新たな金鉱脈として「海底」が注目されています。それが「海底熱水鉱床」です。

深海の底からは熱水が湧き出ており、そこに銅などの金属成分が沈殿していくことで金銀だけでなく、稀少で高価な貴金属「レアメタル」の採掘も期待できます。

深海は、いまだ人類が解明できていない神秘のゾーン。「海底金鉱脈」には国内唯一の金採掘場、菱刈鉱山に次ぐ、新しいチャンスが眠っているかもしれません。

金のみならず、レアメタルへの期待も高まる一方で「深海探査は宇宙探査より困難」ともいわれており、採掘事業が実現するまでには、まだ時間がかかりそうです。

まとめ

国内で商業採掘を行っているのは鹿児島県の菱刈鉱山のみ。鉱山寿命は30年近くあると推定されるものの、心細い状況です。

人類未踏の地「深海」に眠っているかもしれない金銀やレアメタルのことを考えると心が浮き立ちます。

世界は広い。大航海時代の人々が憧れたエルドラドのような採掘場所が、いつかきっと見つかる気がします。

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