翡翠(ヒスイ)とは?意味や石言葉から価値・見分け方を紹介
翡翠(ヒスイ)は「東洋の宝石」とも呼ばれ、日本でも古くから珍重されてきました。
情緒さえ感じさせる瑞々しく艶のある光沢は、翡翠の魅力のひとつです。
日本最古の歌集「万葉集」に登場するほど、私たち日本人に馴染み深い宝石でもあります。
今回はそんな翡翠の意味や石言葉から価値・見分け方まで一挙にご紹介します。
翡翠とはどんな石?翡翠の意味
翡翠とはどんな石なのか、まずは大まかに説明していきます。
翡翠はまろやかな緑色をした宝石で、鳥のカワセミの羽のように美しい石という意味です。名前の由来は中国にあります。
鉱物学的には硬玉(ジェイダイト)と軟玉(ネフライト)の2種があり、とてもよく似ていますが、これらはまったく別の鉱物です。その総称が「翡翠(ジェード)」になります。
そのため、本来の翡翠「硬玉(ジェイダイト)」を「本翡翠」または「ヒスイ輝石」と区別して呼ぶこともあります。こちらの記事ではこの硬玉(ジェイダイト)を翡翠と表記しております。
“ジェイダイト”は半透明の緑色の美しさが際立つ東洋の宝石である。一般には“翡翠(ひすい)”という呼称のほうが馴染み深いかもしれない。この“ジェイダイト”は、ヒスイ輝石の学名(Jadeite)のカタカナ読みである。そしてこのヒスイ輝石が集合した岩石はヒスイ輝石岩(Jadeitite)と岩石学的に呼称されている。これに対して“翡翠(ひすい)”は、学術的に厳密な定義がなされていない。宝石学ではヒスイ輝石から成る岩石を“ジェイダイト”もしくは“翡翠(ひすい)”としているのが実情である。
鉱物学的な翡翠の特徴で特筆すべきもののひとつが「壊れにくさ」です。
硬さでいえば、ダイヤモンドが最高硬度10を誇りますが、「靭性(壊れにくさ)」では翡翠が全宝石中トップクラスです。翡翠は硬度6.5しかありませんが、ダイヤモンドを粉々にするハンマーの一撃も翡翠を砕くことはできません。この驚異的な靭性の高さは、結晶が緻密に絡み合っている翡翠の構造にあります。
石の意味としての翡翠はエメラルドと共に5月の誕生石としても有名で、成功と繁栄の象徴とされ、夢や目標を達成に導く意味を持つとされています。持ち主を災いから守るとも考えられています。石言葉は「長寿・福徳・安定」などがあります。
歴史的には日本でも縄文時代にはすでに装飾品として用いられています。主に呪術や祭儀など宗教的権力者が使っていました。三種の神器のひとつとしても有名な「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」もこの翡翠から作られました。
翡翠の宝石としての価値は主に「石の種類・質」「色」「透明度」の3つによって決まり、最上級の翡翠ジュエリーは億単位の値段で取引されています。
2017年に香港で開催された「サザビーズジュエリーオークション」ではレイモンド・ヤードの翡翠のネックレスが「約1億3000万円」で落札され、大きな話題を呼びました。
ではここからは、翡翠の「石言葉」「由来や歴史」「価値を決めるポイント」「見分け方」それぞれの項目にスポットを当て、詳しくご説明していきます。お時間のある方はぜひ最後までご覧ください。
翡翠の石言葉
翡翠は洋の東西を問わず、事故や災難などの災いを防ぐ力を持つといわれています。
古くから護符や魔除けとして利用されてきました。石言葉には「長寿・福徳・安定」以外にも「忍耐・調和・飛躍・幸運」といった意味があり、心や身体のバランスを整える効果があると信じられています。
また中国では五徳「仁・義・礼・智・勇」を高める宝石とされ、成功や繁栄をもたらすと考えられています。そのため古来から時の権力者や王族に重宝され、現代では事業の経営者にも人気があります。達成したい目標や夢を持っている人にはおすすめなのが翡翠です。
翡翠の由来や歴史
次は翡翠という名前の由来をお話ししましょう。中国では元々鳥の「カワセミ」のことを「翡翠」と呼んでいました。「翡」はカワセミの雄を、「翠」はカワセミの雌を指す漢字です。
ミャンマーで採れた翡翠は鉄分が豊富な赤土に埋もれていたため、表面が赤く染まっていることがあり、切断面は緑色をしています。その姿がカワセミの美しい羽を想起させることから、ミャンマー産の石が中国に伝わったときに「翡翠」と呼ばれるようになりました。
また翡翠の総称を表す英語の「ジェード(Jade)」の由来は16世紀にスペイン人が南米のアステカ王国を征服したことに由来します。その緑色の石は、現地の人々から「腹痛に効く石」として重宝されていました。このためスペイン人は「piedra(石) de(の) ijada(腹痛)」と呼びましたが、フランス語に翻訳されたとき「piedra(石) de(の) jade(ジェード)」と間違って伝わり、これがそのまま「Jade(ジェード)」という正式名称になったとされています。
翡翠の歴史としては日本では縄文時代から翡翠の加工を始め、そこから8世紀の古墳時代まで宝石を意味する「玉」として珍重されてきました。ところが奈良時代以降は、「玉」を大切にする文化がぱったりと姿を消したのです。
それから時は流れ、日本人が再び翡翠を知るようになったのは明治時代、中国からの輸入品として持ち込まれたときです。この時には、中国での呼び名に倣って「翡翠」と呼ばれています。当時の翡翠は、縄文時代や古墳時代の遺跡から出土はしていましたが、日本国内の産地が未発見だったため、「中国の宝石」という認識でした。
これが覆されたのが1938年のことです。翡翠の原石が新潟県の糸魚川市で見つかったのです。これにより「翡翠は日本固有の宝石である」ことが証明されました。
2016年には翡翠が日本を代表する石、「国石」に選ばれています。
日本最古の歌集「万葉集」にも翡翠の歌が詠まれています。
「沼名川(ぬながわ)の底なる玉
求めて得し玉かも 拾いて得し玉かも
あたらしき君が 老ゆらく惜しも」
(沼名川の深い川底にある宝石。
探し求めてやっと手に入れた宝石。
この宝石のようにかけがえもなく尊い君も
いずれ老いていくのが本当に切ないのだ)
翡翠は万葉のロマンをも感じさせる宝石です。
翡翠の価値を決める3つのポイント
翡翠の価値は主に「石の種類・質」「色」「透明度」の3つによって決まります。
種類と品質
翡翠の種類で価値の高い硬玉(ジェイダイト)はとりわけその産地が重要です。
硬玉は非常に限定された地域でしか産出されず、価値のある高品質なものはほとんどがアジア圏でしか採れません。その中でも特に高品質な翡翠が採れるのがミャンマーで、18世紀に発見されて以来、世界の産出量の9割を占めています。日本(新潟県・糸魚川市)も高品質な翡翠の産地で、ミャンマーと南米グアデマラに並ぶ世界三大産地に数えられています。
翡翠の品質は処理の程度により3つの等級に分けられます。
A貨(Aランク):「カット(研磨)」と「ワックス(蝋)での含浸処理」以外の処理がされていない天然石。「ナチュラルナチュラル」とも呼ばれます。ワックスでの含浸処理が許容されている理由は、天然の状態でも起こりうる現象を人為的に行う「改良」処理だからです。
B貨(Bランク):「漂白」と「樹脂による含浸処理」が施された処理石。これらの処理は、天然の状態では起こらない「改変」処理のため、処理石とされます。
C貨(Cランク):「着色」処理された人工翡翠。人為的に色を変えられた人工石とされます。
以前は「天然無処理」「エンハンスメント(改良)」「トリートメント(改変)」の3つで区別していましたが、現在では「天然無処理」と「トリートメント(改変)」の2分類になりました。
現在、JJA(日本ジュエリー協会)とAGL(宝石鑑別団体協議会)加盟の鑑別機関では、天然石を天然無処理、トリートメント(改変)と2つに分類しています。 ところが3年前までは天然無処理、エンハンスメント(改良)、トリートメント(改変)の3つに分類されていました。
天然石扱いとなるエンハンスメント(改良)を施された場合でも、鑑別書には画像のようにその旨が明記されます。
「光沢の改善を目的としたワックス加工」は一般的に行われる加工で、これにより天然石としての価値が下がることはありませんので、ご安心ください。
ただ、ここで気を付けなければならない重要な点が1つあります。それは
B貨の翡翠であっても鑑別書には「天然翡翠」「天然ジェイダイト」と表記される点
です。鑑別書を見る際は必ず、
「合成樹脂などの含浸処理が行われていない」ことを確認しましょう。
樹脂による含侵処理を始めとするいくつかのトリートメント(改変)処理されているものは、B貨・C貨の翡翠となり価値が大きく下がるため、安価で取引されます。
色
種類(産地)、品質と共に翡翠の価値にとって大事なものが「色」です。翡翠といえば「緑色」のイメージが強いと思いますが、その他にも白・黒・赤・青・黄といったさまざまなカラーがあります。日本国内でもっとも価値のある色は「濃いエメラルドグリーン」次いで「ラベンダー(薄紫)」です。その他の色は品質が最高でも、価値は数十分の一程度に下がります。
色による評価は国によっても価値基準が異なります。例えば日本や台湾では色の濃いものが好まれ、中国では淡く明るい色が好まれます。
ただし、その中で絶対的な価値を持つ最高品質の色があります。
それが「インペリアルジェード」とも称される「琅(ろう)かん」です。
半透明で艶やかな緑色の琅かんは光の加減によって、胸のすくような鮮やかな緑色にもなり、貫禄のある力強く深い緑色にもなります。まさに「皇帝の翡翠」に相応しい色合いをしています。
ここで興味深いのが、翡翠の基本色は「白」ということです。純粋な硬玉(ジェイダイト)の結晶は無色で、翡翠は結晶構造が細かな繊維状の集まりのため白色になります。ここに他の輝石や不純物が混ざることにより、さまざまな色になるわけです。
※輝石:暗緑色または暗褐色・黒色の珪酸塩(けいさんえん)類から成る鉱物
翡翠の鮮やかな緑色はクロムやコスモクロア輝石由来で、深い緑は鉄やオンファス輝石由来です。こうした構成の翡翠は、色ムラのあることがままありますが、これはむしろ天然石の証でもあり、色ムラが翡翠の価値を下げることはありません。
透明度
翡翠は結晶の構造上、ダイヤモンドのような透明感は持ちません。価値のある高品質なものでも半透明、中級品だと不透明な翡翠も多くあります。
だからこそ、透明度は翡翠の価値に多大な影響を及ぼします。「琅かん」のような極上品は、下に透かした文字が見えるほどの透明度を誇ります。半透明の翡翠は水滴のように瑞々しい色合いで、光を受けて輝きます。
翡翠の見分け方
高品質な翡翠を見分けるには、前述のように価値を決める3ポイントを見ればいいわけですが、上質な翡翠は高額で取引されることから、以下のように偽りの表記をされて販売されるケースもありますので、購入の際には注意が必要です。
・軟玉(ネフライト)」を「硬玉(ジェイダイト)」と表記している
・翡翠に似た別の鉱物に加工を施し、翡翠と表記している
・ガラスやプラスチックなどの完全な人工物を、翡翠と表記している
専門の鑑別機関が発行した鑑別書があれば、加工の有無などが明記されますので心配はありませんが、それが無い場合は下記のような見分け方が可能です。簡易的ではありますが偽物を見分けることもできます。
・色が不自然なほどに鮮明
・色ムラがなく平坦な色合い
・透明度が高いのに安価
・透明度が高すぎる(透き通るほどの透明度の翡翠は天然にはありません)
・内包物(インクルージョン)がなく、代わりに気泡がある
偽物の中には目でみただけでは見分けが困難なほど精巧に作られたものもありますので、特に海外で翡翠を購入する場合には必ず鑑別書付きのものを買うようにしましょう。
日本国内でも「中央宝石研究所」「日本宝石科学協会」「日本彩珠宝石研究所」など、鑑別書を発行するいくつかの鑑別機関があります。中でもAGL(宝石鑑別団体協議会)に加盟している「中央宝石研究所」によって発行されたものが、最も信頼のおける鑑別書といえるでしょう。
鑑別書も無く、見分けが困難な翡翠は、弊社のような買取業者の鑑定士に査定依頼するのも良い方法のひとつです。ぜひお気軽にお申し付けください。
まとめ
翡翠は、ダイヤモンドなどのような煌めきや派手な華やかさはありません。ですが、縄文時代からの日本の歴史が凝縮されたような、時を感じる静かな美しさを持っています。礼節を重んじる日本人の美徳を表した、まさに「国石」と呼ぶに相応しい宝石といえます。
日本ではどちらかというと渋い年配の方に人気がある翡翠ですが、落ち着いた雰囲気の翡翠は、他の輝きの強い宝石よりも身に着ける人を選びません。若い人の肌にもとても良く似合います。
親子でお揃いの翡翠ジュエリーを身に着けるなど、他の宝石では中々できない楽しみ方も可能です。皆さんもぜひこれをきっかけにして、翡翠と親しんでみてはいかがでしょうか。
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